引き違い建具の建付け調整です。
和室の場合に見受けられる外付けサッシの内側にある
内障子と云われる建具の削り合わせ参考事例です。
今回、困り事の症状とすれば開け閉めするのに中央付近で
高さが詰み途中で重くなったり動かなくなります。
そして建具を閉めても上下の違いとして上0~下10㎜近くで
柱と建具で転びの隙間が有ります。
予備知識・・と言いますか、むしろ大切で必要な事ですが
引き違い建具は本来の納まりでは端から端までスムーズに動き
閉めた時には二枚建ての納まりでは正面から見て右側の建具が手前です。
左側が後ろ側に組み込まれるのが一般的で、いわゆる着物を羽織る時の
襟元?、胸元の重なり勝手と同じだと昔から伝え聞いています。
もちろん組合せ枚数や建具の種類や部屋の目的や
特有の納まり次第で異なります。
もちろん例外はたくさん有りますが、どちらだったかな?と
迷った時の判断方法として
[閉めた時には二枚建ての納まりでは正面から見て右側の建具が手前]で
着物は右前!・・が記憶としては、とても有効です。(笑)
四枚建ては真ん中の二枚が後ろで両端が前側の組み合わせ。
6~8帖の和室、続き間などでのフスマの四枚建では大切な
座敷(床の間、仏間など8帖)に召し合わせの被り縁が付いた方が
真ん中の二枚、両端の二枚が後ろ側(6帖)が多いです。
現実に良く有るパターンでは組み合わせを無視した
入れ方に変更されたままの状態が有ります。
お家の方や納まりでの組み合わせ条件を良く知らない人が
動きにくい所を外し本来の組み合せや向きを無視して勝手に、
なんとか動く所へ色々と変更している時が有ります。
それは引手の位置や向き、組子やガラスの裏表、
又はフスマでは僅かな縁の出代の違いで組み合わせが正常か?
間違っているか?の判断が目視だけで可能な時が有ります。
勝手に変更され誤った配置、組み合わせのままで
建付け調整の削り落とし加工をしてしまうと元の正しい位置に
戻さなくては、ならない時には余計に悪くなってしまう恐れがあります。
よって、削り直す前の状況判断が出来ていないと、たとえ
削り落とし加工の技能が有っても後から見落としでの
失敗が明らかになった時には、事前判断ミスの影響はとても大きい。
この現場事例では外付けサッシの内側にある内障子の動きや
建付けが悪く閉めた時に斜めに隙間が出来ます。
建付けの隙間度合いは上下や中央付近など隙間の位置は様々ですが
隙間の度合いでは閉めた時に隙は常に0㎜でピッタリが理想ですが
柱の捻じれや反りは温度、湿度など気候条件だけでも
木材構造物やカモイ、敷居なども微妙に収縮、膨張などの変化が有りますし
腐食や地盤沈下など外力によっても変わります。
よって3㎜前後の隙間なら許せるか?否か?となりますが・・
人それぞれや、現場により異なります。
もっと具体的で物理的な判断とすれば5㎜以上の隙間はゴキブリや
ハエ、蚊などが建具を閉めても室内に出入りし得たり
隙間風や覗き見・・など現実的な不具合となります。
別な判断としては納まり寸法によって調整の限界を知る事が可能です。
それは建具の形状が横1:縦2の対比形状で縦の隙間が
上下いずれかで11㎜以上あればスムーズに開閉動作は出来ないはず!
と目視だけで各所の納まり条件によって明確に判断できます。
途中で詰んで動かなくなったり、動くように削れば、
ある場所では外れてしまうなど極端な結果になってしまう事になり得ますので、
その場合は敷居の高さを根本的に修正、改善してからの建具の調整が必要で、
やはり最初の見極めが重要です。
※ただし敷居やレールの波打ち現象での転びには当てはまりません。
これらの詳細は多岐に渡りますので機会が有れば別の機会に掲げます。
この現場では敷居もカモイも上げ下げ調整での補修は出来ない条件でしたので
建具の削り合わせと戸車の調整範囲のみで修正する事にしました。
注意が必要なのは動きにくいからといって、いきなり上部の高さを
ツノ切断、肩の削りは危険です。
まず先に鴨居の溝には入れず敷居に対して建具を置いて
上が外れた状態で倒れないように注意しながら閉めた状態で
戸先と柱の建付け隙間が正常か?否か?を確認。
悪ければ戸車の高さ調整だけで済むか?
下端を削り直しが必要か?を判断します。
それによって下端の調整が終えてから上の高さを切断、
削りが必要か?否か?の順序となります。
この画像では下端の調整は終えて高さの切断と
削り落としが必要な段階です。
通常は建具を↓横向きの立てかけスタイルが現場施工では、
やり易い形となります。
この時に軽く立てかけた状態の軽い障子やフスマが突風で倒れて破れたり
ガラス障子ならガラスが割れてしまう初歩的なミスが起こりやすいので
立てかけ状態は常に、倒れる可能性が有る、そのリスク回避は必要です。
作業位置の下にはノコ屑、カンナ屑のゴミ受け養生対策は必須です。
熟練、経験者の職人さんでも、この養生処置を軽ろんじる場合が有ります。
上の画像では↑畳の上に養生シートを敷く前の
建具を立てかけての作業ですが養生不十分の悪い例です。
まずはツノの必要巾で肩の削り落としに必要な範囲は
手ノコの縦挽目(タテビキメ)で必要な深さだけ縦切りします。
それから肩の高さを落とす切断位置で手ノコの横挽目を使用して
切り込み過ぎず、かつ必要な深さまでギリギリ切断します。
とてもアナログ技能で基本ノウハウを必要とする定番の対処。
当然、起こる色々な失敗事例も含めて、そのリスク回避策を交えた
基本ノウハウの中に含まれる最小単位の単体ピースの習得が必要。
こんな切込み加工作業に使用する手ノコ道具は
8~9寸(刃渡り約240~265㎜前後)と呼ばれる両刃ノコが定番。
またはゼットソーの横切り用やタテ切り用の二種を使い分けとなります。
この時に縦横兼用のゼットソーは有利な時と、そうでもない時で様々。
手ノコで肩の粗切断をしてからシャクリカンナなどで削り取ります。
ここでは五徳カンナを使用しましたが
18~21㎜巾の底シャクリカンナでも可。
削り加工の手順や基本ノウハウは詳細な単体ピースとなる要領が
無限では有りませんが最低数で必要な要領が有ります。
それらは他の基本ノウハウに共通したり
他の場面でも応用の利く基本要領や手法が一定数で存在します。
それらは、またの機会で掲げる事が有ろうかと思います。
以上で建具の開閉不良、参考例を終えます。
次の現場事例もお楽しみに。