サシガネには付き物の墨サシの話です。
墨サシと言えば・・ついでに墨ツボが付いて
一組ともなり、それにサシガネが関係して(一仕事)になります。
この三点セットで・・どうの、こうの・・は又の機会に掲げます。
このページでは墨サシだけについて掲げたいと思います。
※寄り道の余談になりますが
ついでに似たような形のシラガキと言う表示、ケガキ用具があります。
刃先が墨サシと類似しており使用目的も似たように切断位置の印をしたり
他にも用途は有りますが墨サシが、どうの・・こうの・・では
関連付ければ両方の相乗効果で記憶に残り易いかと思います。
この用具は刃の付き方の違いで右勝手、左勝手に分かれます。
ここで、さらに、もう一種類の用具で切断位置の表示例を割込み紹介します。
お馴染みのカッターナイフです。
これも下図のように↓時にはシラガキと似たような使い方をします。
鉛筆や墨サシよりも精度の高い切断位置の表示をする場合や
和室の長押やカモイ、廻り縁など鉛筆の黒鉛が白木に付く汚れを嫌うのと
手ノコで切断時に木肌が捲れて仕口が汚くなるのを防止の意味もあります。
シラガキ用具が手元に無い時や右勝手か?左勝手か?
使い分けが面倒な時にはカッターナイフの刃が薄いので
左右両方の勝手違いを気にせず兼用使いとなります。
しかし‥厳密に言えばカッターナイフの刃にも
僅かにシノギ角度が有ります。
これが片面角度だけの刃か?両側に角度付きか?で
カネ巻き定規からの逃げ位置が異なります。
刃が薄いので、そのくらいの誤差は無視するのが多いと思います。
やはり精度を必要とする特殊な仕口加工の切断位置の印しは
シラガキで左右の使い分けが必要。
※かなり寄道しましたが墨サシの本題に戻ります。
最近は既製品で売られていますし樹脂製の物や
墨液がカートリッジみたいに内臓された物とか
昔のように竹を必要長さに切り、それから必要巾に割って
削り揃えて作るのは極端に減りました。
しかし、メンテナンスでは似たような事をしますし、
破損すれば急遽、形作りから補修が必要にもなります。
とてもアナログですが知って、いれば何処かで役に立つでしょう。
まず基本的な持ち方と角度の一例です。
下図は↓右利きの者が左側にシノギ角度を付けた削り方の墨サシを使用しています。
材料に対してシノギ削りの部分だけが直角になるように
墨サシ本体は斜めにします。
材料が平面でベタ当たりの部分は墨サシを立てようが
傾けようが大きな問題にはなりません。
※厳密には斜めに転ばし墨付けは印幅が広く。
当たりは直角の方が墨巾が狭く精度が高いです。
しかし下図のように一部が凹凸で下がっていれば
墨サシを立てていれば落ちて下がった部分は
右側に印が寄ってしまい歪んだ表示となります。
やって見れば解ります、歴然です。
当然ながら木材、地肌の下がり代にも限度が有ります。
したがって墨サシのシノギ角度で削った範囲までは当たり所が下がっても
シノギ角度で削った範囲までなら通し印が可能です。
丸太材など、その深さ、落差が激しい場合はシノギ角度で削った範囲では
足らないので背中側の長い直線を利用して位置印しを引き通して表示します。
この場合は材料に対して直角立てにして使用します。
この墨サシ用具は、おそらく・・一千年以上も前から伝わる手法です。
すごいですね。・・まさに「アナログ技能万歳!」です。
墨サシ本体の形作りでは右左の勝手違いでの削り方は使用する人の好みです。
様々な勝手違いの作り方で使用して何度も墨付け作業を繰り返せば
不自由、使い良さ、長持ちなど使い勝手の良し悪しが、おのずと決定されてきます。
自然の竹材から、これほど長年に渡り使い続けられる用具は素晴らしいです。
茶道では茶筅?や、めずらしい昔話ではエジソンが電球のフェラメントに
色々な素材を試した結果で一時は竹を用いたそうですね。
この墨サシのメンテナンスには、やはり付き物とされる工具が
追いれノミやカナヅチなどの基本ノウハウも必要なります。
刃先は竹の繊維層を利用して1㎜前後の間隔で割込み
バラバラの毛羽で粗い刷毛のような束作りをします。
その後は墨サシのシノギ面を斜め角度で追入れノミで削り形を作ります。
この時の削る形や長さ、目的が鉛筆を削る時に、
同じ感覚となり使用目的や使う要領も鉛筆に類似します。
刃先は向こうから手前にズラすので何度も使用すると
先の端が捲れて剥がれます。
その防止には手ノコの刃先の両端には親刃が有るように
墨サシも刃先の保護の為に竹の割り束で端から2~3枚を
保護の押さえ用の為に残し斜めに切断します。
そして背中側は長めに直線帯を作ります。
決して深く削り過ぎない事です。
竹の表皮近くが硬く摩耗に強いです。
削り過ぎて竹の芯方向に深く削り過ぎると
竹の繊維が柔らかい部分となり長持ちしません。
この辺りをメンテナンスで加工するには追い入れノミがベストです。
カッターナイフでも、ある程度は出来ますが・・
やはり決め所は追入れノミが有効。
その当たりで必然的にノミの切れ味が必要となり
又しても別の要素が必要となる絡みが出てきます。
※ここで・・お馴染みの余談ですが・・
そんな色々な場面で基本ノウハウに必要とされるのが
アナログ知識・技能で最小単位のノウハウとなる単体ピース。
この神出鬼没の単体ピースは必要性は解りますが
ベッタリ絡むでもなく無視する訳にもいかず。
むしろ、この単体ピースだけをターゲットにして
知識・技能を習得しておき必要な時に使い演じる場面の準備を、
前もって徹底的に準備しておくのも有効策でもあります。
いわゆる・・何の完成形になるか解らないけども必要な
目的不明ですが後で有利な共通部品創りとも言えます。
※元に戻り本題です。
墨サシは切断位置の表示印だけではなく・・なんとッ!
・・文字を書く為の筆、使いもします。
筆元になる、この辺りの削り方は長さ太さ形状など・・
他の職人さん達から見られた時にセンスを問われます。
この画像では良い方では無いですが悪過ぎるほどでは無いかも知れません。
もっとダサイのを何度も見た事が有あります。
しかし・・腕の良し悪しは別です!
でも見た目と同じく腕も・・やっぱりッ‼・・も有ります。(笑)
文字書きの為に使用する筆使い部分は使い手によっては・・
建物が存在する間は永遠に棟梁、創作者としての表示文字が残されます。
その書き方は古代の洞窟や壁画に残る印などと似て、
ある意味・・芸術性を含みます。
本家普請の立派な建物の小屋組などに表記されている
陸水の墨ラインでの何寸上がり・・何寸下がりなどのレベル表示や・・
い三・・ろ五・・は十二・・など番付け、座標文字などは
書道家の先生が書いたかのような達筆を
この竹製の筆使いで、「これ見よ」がしに器用に書き残されています。
そんな理由や大切そうな意味では、魅力的な文字に見せるには
つくづく幼い頃から習字に励んでいればと・・
私は後悔する事もしばしば。
しかし近年は番付け表示はABC・・123で
漢字、漢数字が、ほとんど無くなってきましたので
大助かりですが機会があれば憧れも有り表記練習は続きます。
しかしいくら文字表記の見た目が奇麗でも肝心の墨付けや
仕口加工のミスが多く上棟式に工事ストップや大勢の中で
大恥をかくような仕事ぶりは大問題です。
かたや味気ないABC・・123・・などのプレカット表示でも
100%に近い仕口加工の精度や完成度の方が現実化されています。
それでもプレカット工法を採用するほどでもない小規模や
部分的な対処の場合はアナログ的な手法は欠かせません。
以上で墨サシ本体と、それの絡みを少々掲げさせて頂きました。
[守・破・離]の[守]らしき部分と思われますが
信憑性は解りませんので興味の有る方は御自身で確かな
専門書、文献、情報で照合、確認をして下さい。
次のページ内容もお楽しみに。