前ページからの続きです。
土壁は真壁と大壁の二種に大きく分けれると思います。
今回の解体部分は柱の芯に土壁が有るので真壁?か芯壁か?
いずれの表示が正しいか?判断する必要が有ります。
この現場では両面、粗塗り土壁です。
もっと簡素に施工している場合の土壁は
内壁側だけに土壁を塗り外壁側は塗らないで
下地の小舞い竹が丸見え状態も有ります。
手抜きも有るし・・正当な節約も有ります。
その場合はの呼び方は裏返しが無い土壁と表現します。
本来は土壁は見えなくても裏表両面塗りが
サンドイッチ構造となるので安定しています。
土壁の全体重量は柱の芯(真)に抜き板と呼ばれる背骨材が
下・中・上にと平均三列で入っています。
粗塗り土壁の固定は、このような背骨となる
105×厚さ15㎜の貫き板材に荷重を掛けています。
柱の長さが3m以上なら4列ほどに増えます。
土壁面に、なにかをビス止めしたい時には
見えない抜き板の位置を推測して長いビスで狙います。
後は小舞い竹と呼ばれる丸竹や小割りした竹を
アバラ骨材の役目で縦横に組み込まれています。
その粗く四角い網目に藁(ワラ)の入った練り土を塗り
自然乾燥で固めています。
一回目が荒壁と呼ばれ次に砂を混ぜた中粒の土を塗り
ヒビワレ防止に長いワラや各種繊維を挟み中塗りとします。
さらに上塗仕上げと進み色々な和風仕上げの
重ね塗り工程となります。
今回のような粗塗り土壁は建物の構造の一部として、
さらに多少の断熱目的としても兼ねています。
いよいよ土壁の切断撤去となります。
柱の面に約30㎝ピッチ程度で間渡し竹と言う役割名で
約12㎜前後の丸竹がφ15㎜×深さ約15㎜程度の穴に
差し込んで壁自体の荷重を柱材に分散させています。
縦は桁や梁など横架材の下場に約30㎝ピッチ程度で同じく
φ15㎜×深さ約15㎜程度の穴に差し込んで横ズレを防いでいます。
後は割り竹を細縄やビニール紐で巻き付け
碁盤の目に編み込みメッシュ構造にしています。
穴に差し込む以外に柱面に差込み穴が無い時は
釘を打ちそれに竹を引掛ける場合もあります。
竹の端は止め方がアバウトです。
その小舞い竹に土壁を塗り付けて絡ませています。
小舞い竹の、その他大きな特徴は土台など下側の
横架材に対しては柱側と同じくφ15㎜×深さ約15㎜程度の
穴に差し込んで横ズレを防ぎはしますが、
穴の底や土台の天場には突き付けて
最初から突っ張るのではなく・・
最初は小舞い竹の下端は、あえて15㎜程度
わざと隙かし気味に、浮かしているのが多いです。
土壁を塗って自重が掛かり垂れ下がって底付きとなり
ギリギリ当たるか?当たらないか?程度が理想です。
最初から縦の竹が突っ張ってしまうと土壁塗り後の自重によって
壁の中間が膨らみ壁面が湾曲してしまうからです。
年月が経つと浮いていたのが下がり、下に当たり
やがて突っ張り土壁が湾曲するか?しないか?です。
同じ事として床の間など横幅の広い壁面で中間に縦の
抜き板を取り付ける場合も同じ理由で下側の抜き穴は深く掘り
抜き板の下端長さは底まで付けずわざと浮かし下は釘止めもしません。
やはり縦の竹と同じく下がり代を見込む為です。
さらに拘りとして有るのが縦の竹は大切な内壁面ではなく
外面に付けて内側の柱チリ巾を多くします。
同じ理由で貫き板を柱に釘止めする時は・・
「部屋側から外壁に向けて釘を打つものだ!」
「3㎜(※昔は1分←ブ)でも部屋内のチリ寸法を多く取れ」
と親方や先輩から、うるさく言われましたが
今でも、そんな拘りは、まだ有るかも?知れません。
部屋内の柱チリ寸法を大きく見せるのは柱を太く見せる為や
土壁が中へ湾曲したり部屋内の仕上げ壁を何度か
塗り替えすると塗り厚さが増えて、最初に有った柱のチリが
徐々に無くなり柱のチリの見栄えが苦しそうで
貧祖に見えるからでしょう。
土壁の様々な特徴は以上です。
さて解体要領は、やはり抜き板や横、間渡し竹の
切断をすれば簡単に外れます。
まず横間渡し竹の入り代だけを切断します。
土壁を先に叩いて土だけを落し小舞い竹を後から
外すのも良いですがヘタすると叩いた土が天井裏や
室内側の壁の中に入り込み取りにくくなったりが面倒。
タテヨコ45㎝程度の間隔でパズル切りして外すと
取り扱いしやすいですが現場状態や目的によって
ケースバイケースで対処します。
解体後の廃棄処分に関しては、この小舞い竹付きの土壁は
廃棄物の仕分けとしては、とてもやっかい物とされています。
昔は、このままで廃棄処分でしたが中間処理場では
土と小舞い竹に分離しても土壁自体に藁やビニール紐が
混入されており埋め立てできないとの事。
最近の廃棄物対処としては残土、ガラ類とは一緒に
埋め戻し出来なかったようですが
厳しい仕分け品目はしなくても良い時も偶に有ります。
たかが土壁の事ですが廃棄処分の対処内容は
常に変化し環境対策は厳しさを増、その取扱い基準は
他の廃棄物と同じく面倒になりつつあります。
次はアルミサッシ枠の一部切断撤去の特殊な解体へと進みます。
次に続く。