前ページからの続きです。
いよいよ屋根瓦葺き替え施工となります。
ここからは多能工・職の本領発揮です。
大工工事で下地を改善しながら同時に追って
既存瓦も葺き直し順次進める手順です。
この複合された関わり方のメリットは途中で引き継ぎの
ブランクが全く無いので、いつでも好きな所まで進められ
好きな所で中断できます。
解体・大工下地・屋根瓦葺き・・と3種の絡みとなります。
解体⇔大工下地・・は良く有るパターンですが
大工下地⇔屋根瓦葺・・が特異性で価値が有ります。
既存の屋根下地は瓦桟木だけを外し
古いフェルト紙は剥がさずにそのままにします。
とても簡易な内容として普通合板の5.5㎜で押えこむ事にしました。
その上にルーフィングシートを敷き
瓦桟木を打ち直して既存瓦を葺き直す工程です。
下図の三枚は編集加工で斜め端がカットされています。
野地板の上にあったフェルト紙は一部であり、
ほとんどは昔ながらのコケラ葺きだったのです。
もう今では、ほとんど用いない防水方法の下地です。
文化財の維持では、よく出てくる納まりです。
新しい劇場を造り披露する時に「こけら落し」と表現しますが、
このコケラの事でカンナやノミの削り屑の意味かも知れません。
大昔では多分、ルーフィング下地は高価で、
まだ一般流通されてなかったと思います。
有っても公共工事の使用程度で一般住宅の屋根には、
とても予算には合わなかったと想像できます。
コケラ葺きとはカンナ屑の厚い木の皮みたいな
薄剥ぎの木っ端板などを重ね張りした物です。
トントン葺きとも呼ばれたと思います。
とても小さな釘で一枚ずつトントンと釘を打つ為です。
素材のイメージとすれば菓子おり・・おり箱などの
薄い木の蓋みたいな物です。
別な例では和菓子の饅頭の底に張ってある薄い
木のヘギ板みたいな物です。
強風時にヘタに剥がすと散乱して近所に飛散すれば
回収、掃除が大変な事になります。
よって下地合板でコケラを押え込み水下から水上へ
被り勝手張りとしてロール釘で打ち止めます。
他の現場では野地板の替わりに4.5㎜の内装用プリント合板の
B級品だけを裏向きに鎧葺きして瓦桟木も無く直葺きしてある、
とても粗末な納まり現場もありました。
トントン葺きをしてある、この現場は
良い仕事をしている部類かと思います。
しかし後から二階を継ぎ足し、したらしい所は野地板が腐れ
大穴が開いている場所がありました。
怖いですね。・・もし知らずに瓦の上を歩いていると
突き抜けて天井まで落ちるでしょう。
瓦を剥がして見て解るので、後から発見すれば、ぞっとします。
なぜ、こんなに痛むのかは一目、見て解ると思いますが、
二階を後から継ぎ足し時に解体の仕方が粗かったのかも知れません。
外壁に取りついている納まりで、簡単な浅い捨て谷板金しかなく、
肝心な雨押さえ水切り板金がまったくありません。
よって大雨の吹き込みには、もろに雨水が奥に入り込み
簡単な捨て谷だけでは捌き切れないので、
徐々に水腐れしたと思います。
こんな場合は捨て谷板金の巾をもっと広くして
水返しの立ち上げも、
もっと高くすれば簡単には漏れ無かったでしょう。
既存瓦の葺き直しは下から上に向かい進め、その日に出来る範囲だけ
手を付けて部分的には即、追って瓦も葺き上げで進めて行きます。
一旦途切れて翌日に持ち越す場合は
ブルーシートで雨除けの養生をして区切りを付けます。
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